フォーバル調査が示した「活用36.9%・でも変わらない」という現実

フォーバルGDXリサーチ研究所は2026年8月21日、「中小企業の経営状況の変化への対応〈3〉〜AI活用の実態と中小企業の取り組み〜」(BLUE REPORT第9号)を発表しました。全国の中小企業経営者1,653名を対象に2026年6月5日〜7月4日に実施した調査の結果です。

調査によると、業務でAIを導入・活用している企業は36.9%でした。さらに検討中・試験運用中(20.1%)を加えると、半数を超える企業がAI活用に前向きな状況です。

一方、AI未導入の企業に対して未導入の理由を尋ねたところ、最も多かった回答は「どの業務に使えるかわからないため」(47.9%)でした。次いで「専門知識やノウハウを持つ人材がいないため」(53.7%)、「具体的な進め方がわからないため」(47.3%)が続きます。

AI活用済み企業が報告する効果を見ると、「業務効率化」(91.7%)・「工数削減」(86.5%)が上位を占める一方、「コスト削減」は60.1%にとどまりました。この数字の差に、現状のAI活用の課題が凝縮されています。

「効率化91.7%・コスト削減60.1%」の差は何を意味するか

業務効率化が91.7%である一方、コスト削減が60.1%にとどまる——この差は何を示しているのでしょうか。

「効率化した」と「コストが下がった」の違いは、誰の時間が浮いたかにあります。文章作成や会議録の要約にAIを使えば、担当者の作業時間は確かに短くなります。しかし、その浮いた時間が別の業務に充てられるだけであれば、会社全体の人件費は変わりません。

業務フローに組み込まれたAIは、「処理の回数そのもの」を自動化します。個人が使うAIと、業務システムに埋め込まれたAIでは、コスト削減への貢献が構造的に異なります。

たとえば、受注担当者が1日に50件の注文書をシステムに手入力していたとします。担当者がAIで文章作成を効率化しても、50件の手入力は残ります。しかし、受注システムにAI-OCRを組み込んで注文書の読み取りを自動化すれば、50件の手入力そのものがなくなります。前者は個人の生産性、後者は業務コストに影響します。

「個人ツール」と「業務フロー統合」の違いを整理する

AI活用の2つの層を比較すると、課題が明確になります。

― 個人ツールとしてのAI 業務フローに組み込まれたAI
① 社員が個別にAIツールを使う 業務システムの中でAIが自動処理する
② 文章作成・要約・情報収集など 受注仕分け・問い合わせ分類・承認判定など
③ 担当者が操作して使う トリガーで自動起動する
④ 個人の作業時間が短縮される 処理件数そのものが自動化される
⑤ コスト削減への貢献は間接的 業務コストに直接影響する

多くの中小企業が「AIを活用している」と答えながらも「どの業務に使えるかわからない」と感じているのは、使っているのが個人ツールの層だからです。業務フロー統合の設計を考えていなければ、ツールを変えても同じ壁にぶつかります。

自社で確認できること:業務フローAI化チェックリスト

業務フローへのAI統合が有効かどうかは、次のチェックリストで確認できます。当てはまる項目が多いほど、AIを組み込む余地が大きい業務フローを抱えています。

確認 チェック項目 典型的な業務例
□ 毎日繰り返す「同じ内容の入力・転記」がある 注文書をシステムへ手入力
□ 届いたメール・問い合わせを「仕分け・振り分け」する手作業がある 問い合わせメールを担当者に手動転送
□ 同じ種類の質問に毎回同じ回答を作成している 納期・在庫・料金への定型返信
□ 申請・発注・経費などの「承認フロー」が紙やメールで動いている 押印のための書類のやりとり
□ データ集計・週報・月次報告が定型作業として残っている 売上集計をExcelで手動加工
□ 特定の業務が「担当者しかわからない」状態になっている 得意先ごとの対応が属人化
□ 書類・帳票の内容を確認・照合する手作業がある 請求書の金額と発注書の照合

3項目以上当てはまる場合、業務フローへのAI統合によって具体的なコスト削減が見込めます。5項目以上なら、早期に着手するほどインパクトが大きくなります。

業務フローにAIを組み込む3つのアプローチ

業務フローへのAI統合を検討するにあたり、着手しやすい3つのアプローチを整理します。どれも「1フローから小さく始める」設計が現実的です。

アプローチ①:受発注処理の自動化

FAXや電子メールで届く注文書・発注書をAI-OCRで読み取り、品番・数量・納期などの情報を受注システムへ自動連携します。さらに在庫状況との照合、出荷指示の自動生成まで連携することで、「受注担当者が手入力をしない」フローが実現します。

スモールスタートのポイントは、最も件数が多い1取引先・1フォーマットに絞ってPoC(概念実証)を行うことです。フォーマットが複数ある場合も、件数上位からAI認識モデルをひとつずつ育てていく方法が定着しやすいことが多いです。

アプローチ②:問い合わせ対応の自動一次応答

メール・問い合わせフォーム・チャットで届く問い合わせをAIが自動的に分類し、定型的な質問(営業時間・料金・在庫・仕様など)には自動で回答文を生成・送信します。AIが答えられない複雑な案件だけを担当者に振り分けることで、全体の問い合わせ対応工数を大幅に削減できます。

重要なのは、対応した内容を問い合わせ管理システムに自動記録することです。ログが蓄積されることで、頻出する質問のパターンがわかり、FAQ・製品説明の改善や次のAI学習に活かせます。

アプローチ③:申請・承認ワークフローの自動処理

発注承認・経費精算・休暇申請などの社内ワークフローをシステム化し、基準を満たす案件はAIが自動承認またはルーティングします。金額・基準の範囲内は自動処理し、例外案件だけ担当者が判断するという「例外管理型」の設計が、現実的かつ安全なアプローチです。

ペーパーレス化と組み合わせることで、押印のための書類やりとりや「誰に承認をもらうか」を毎回確認する手間も解消されます。

3つのアプローチを進める順番の考え方

3つのアプローチはいずれも独立して着手できますが、自社の状況に応じた順番があります。

  1. まず業務フローを書き出す:1日の業務の中で「繰り返し・転記・仕分け・照合」が発生している工程をリストアップします。チェックリストの結果を参考に、件数と手間の積が大きい業務から優先度をつけます。
  2. 1フローを選んでPoC(検証)から始める:選んだ業務に対して、AI組み込みの概念実証を3ヶ月で行います。このフェーズで「AI精度・システム連携・例外処理の設計」を検証します。
  3. 効果が確認できたら次の業務へ拡張する:1フロー目で削減できた工数・ミス件数を記録し、それを次の業務選定の根拠にします。段階的に対象を広げることで、組織の負担を分散しながら自動化の範囲を拡大できます。

「一度にすべての業務を自動化しよう」とすると、設計が複雑になり定着しないケースが多くなります。スモールスタートで成功体験を作ることが、組織全体への展開を早める最短経路です。

よくある質問

「業務でAIを使っている」と「業務フローにAIが組み込まれている」は何が違うのですか?
AIを使っている状態は「社員がAIツールを個別に活用している」段階で、文章作成・会議録要約・情報収集などが典型例です。業務フローへの統合は「AIがシステムの中で自動的に動いている」状態で、受注が届いたら自動で確認・仕分けする、問い合わせが来たら自動で一次返信するなど、担当者が操作しなくても処理が進む仕組みです。前者は個人の生産性が上がりますが、後者は業務コストそのものが変わります。
受発注や問い合わせのAI自動化は、どのくらいの規模の会社から始められますか?
取引先が10社以上あり、毎日5件以上の受注・問い合わせが発生している規模から、費用対効果が出やすくなります。小規模でも「特定の定型作業に集中する」アプローチでスモールスタートできます。まず最も手間のかかっている1業務を1つ選び、3ヶ月の試験導入から始めることをおすすめします。
既存の会計ソフトや基幹システムに組み込めますか?
多くのクラウド型システムはAPIを持っており、連携できます。ただし古い基幹システムやオンプレミスのシステムにはAPIがない場合があります。現在お使いのシステムの連携可否は最初のヒアリング段階で確認できますので、「システムが古い」という状況でもご相談ください。
AI自動化で「間違い」が起きた場合はどうなりますか?
AI判断は100%正確ではないため、重要な処理には「AIが提案し担当者が最終確認する」設計を基本としています。AIの判断の確信度が低い案件を自動的に担当者のキューに振り分ける仕組みにより、ミスのリスクを管理しながら自動化率を高めていきます。最初から全件自動化を目指すのではなく、段階的に人の関与を減らしていく設計が現実的です。

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株式会社DnDは、受発注・問い合わせ・承認フローへのAI組み込みを切り口に、中小企業の業務フローを変える業務システムの受託開発(AIによる業務変革=AX)とオペレーション改善の支援をご提供しています。「まず自社の業務フローを整理したい」という段階からご相談ください。

出典
フォーバルGDXリサーチ研究所「中小企業の経営状況の変化への対応〈3〉〜AI活用の実態と中小企業の取り組み〜」(BLUE REPORT第9号)2026年8月21日発表、N=1,653名(中小企業経営者、調査期間2026年6月5日〜7月4日)。プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000455.000104276.html(2026年10月21日確認)

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