Google Workspaceで起きていること

Googleは2026年9月9日前後、Google WorkspaceのGeminiがアプリをまたいで動作する機能の展開を発表しました(段階的なロールアウトは9月2日開始)。公式ブログによると、Gmail・Docs・Sheets・Slides・Driveのサイドパネルから、ドキュメント作成・調査・メール下書きと送信・会議の予定登録・ToDoの追加を、ひとつの指示で実行できるようになるとされています。

これは、Geminiが「ひとつのアプリのアシスタント」から「複数のアプリをつなぐ調整役」に変わったことを意味します。ユーザーはアプリを切り替えることなく、成果物の形式(スプレッドシートで、スライドとして、など)を指定するだけで、AIが適切なアプリを呼び出して作業を進める設計です。

AIの役割が「単体ツールを操作する補助」から「システム間を横断して動く主体」へと変わりつつある——これはGoogle Workspaceに限った話ではなく、Microsoft 365でも同様の流れが進んでいます。

今回の発表は、このトレンドの一例です。重要なのは、こうした「AI横断連携」の恩恵を受けられるのが、今のところGoogleやMicrosoftのクラウドサービス内に限られているという点です。

自社の基幹システムには、AIが届いているか

多くの中小企業では、業務の核となるデータが自社独自のシステムに存在しています。

  • 受注管理システム(何がいくつ売れているか)
  • 顧客データベース(誰とどんな取引があるか)
  • 在庫・仕入れ管理(今いくつあり、いつ補充が必要か)
  • 案件・プロジェクト管理(どの仕事がどこまで進んでいるか)

これらのデータは、Google WorkspaceやExcelとは別のシステムに入っていることがほとんどです。GeminiがGmailと連携できるようになっても、自社の受注管理システムのデータにGeminiは届きません。

「Workspaceで便利になったこと」と「自社の核となる業務データをAIが扱えるようになること」は、別の問題として取り組む必要があります。

AI連携の「断絶」が生まれる3つの場面

現場では、次のような場面でAI連携の限界に気づくことが多いです。

  • 場面①:「今月の売上はどうか」を毎朝手作業で確認している——受注データが自社システムにあり、ChatGPTやGeminiに貼り付けなければAIに分析させられない。
  • 場面②:顧客からの問い合わせに答えるたびに、別のシステムを開く——顧客の履歴・契約内容・対応履歴が散らばっており、AIが一括で参照できない。
  • 場面③:新しいAIエージェントやツールを試したが、自社データと結びつかず使い物にならなかった——ツール自体は動くが、自社システムからデータを取り出す手段がなかった。

いずれも、AIに届けるデータが「閉じた状態」にあることが原因です。

自社で確認できる3つのポイント

まず現状を把握するために、次の3点を確認してください。エンジニアでなくても、システムの担当者や開発会社に問い合わせれば答えが出る質問です。

#確認することできていない場合の影響
1システムにAPIまたはデータエクスポート機能(CSV・JSON等)があるか外部からデータを取り出せず、AIとの連携が手動に頼る
2データが構造化されているか(名前・日付・金額・区分などが別々の列・項目に入っているか)AIがデータの意味を読み取れず、集計・分析に使えない
3項目名・分類・コードが一貫して使われているか(同じ顧客に複数の表記が混在していないか)AIが同一の対象を別物として扱い、誤った集計・判断が生まれる
4システムを作った会社・担当者と現在も連絡が取れるか改修・API追加の依頼先がなく、手が打てない
5直近1〜2年以内に機能の追加・変更の対応を受けたことがあるかサポートが実質的に切れており、保守の継続可否が不明

1・2・3のいずれかに「できていない」が当てはまる場合、現状のシステムはAI活用の入口に立てていない状態です。ただし、これは今から準備できる問題でもあります。

AI連携できる状態にするための3つのステップ

一気に全部を変える必要はありません。業務への影響を抑えながら、段階的に整備する進め方をとります。

ステップ1:「データを出せる窓口」を作る

既存システムにAPIエンドポイントを追加するか、少なくともCSVやJSONで定期的にデータを出力できる仕組みを作ります。これにより、ChatGPTやClaude、社内のAIエージェントがそのデータを読み込んで分析・応答できるようになります。

注意点として、ここで「書き込み(Write)」から始める必要はありません。まず「読み込み(Read)」の窓口を作るだけでも、AIを活用できる幅は大きく広がります。

ステップ2:データを「AIが使いやすい形」に整える

窓口ができても、データが使えない形では意味がありません。よくある課題は次のとおりです。

  • ひとつのセルに複数の情報が詰め込まれている(例:「山田商事/東京/03-xxxx-xxxx」を1列に入れている)
  • 日付の形式がバラバラ(「R8.4.1」「2026/04/01」「26年4月1日」が混在)
  • 顧客名・商品名に表記ゆれがある(「株式会社○○」「(株)○○」「○○社」が別レコードになっている)

これらを整理する作業は、AIを入れる前の「土台づくり」です。既存システムのデータをそのままにしてAIを接続しても、AIが誤った分析をする原因になります。

ステップ3:「AI連携前提」で次のシステムを設計する

既存システムの整備と並行して、次にシステムを新しく作るときや大きく改修するときには、最初からAI連携を前提に設計します。具体的には:

  • 外部からAPIで読み書きできる設計にする
  • データ項目の粒度を細かく定義し、フリーテキストの入力欄を最小化する
  • 作成日・更新日・担当者・ステータスをすべてのレコードに持たせる
  • Webhookで変更をリアルタイムに通知できる仕組みを持たせる

このような設計で作ったシステムは、2〜3年後にAIエージェントや新しい自動化ツールを導入するときに、追加コストをかけずに接続できます。逆に言えば、今この設計を省いて作ったシステムは、AIを導入するたびに改修コストが発生します。

よくある質問

AIと連携できるシステムを作るには、最初から作り直す必要がありますか?
必ずしも作り直す必要はありません。既存システムにAPI層を追加することで、AIが読み書きできる「窓口」を設ける方法があります。まず現状のシステムにデータを取り出す手段(CSVエクスポート・APIエンドポイント・Webhookなど)があるか確認し、なければその追加から始めるのが現実的です。
「APIがある」だけでAIと連携できますか?
APIがあることは必要条件ですが、それだけでは不十分なこともあります。AIが活用できる連携を実現するには、①APIでデータを取り出せる(Read)、②データが意味のある単位で構造化されている、③項目名や分類が一貫しているという3点が揃って初めて有効に動きます。特にデータの構造化と一貫性は、API追加と合わせて整備することをおすすめします。
Google Workspaceを使っていれば、Geminiのクロスアプリ機能が自社の業務に使えますか?
Googleの発表によると、この機能はGmail・Docs・Sheets・Slides・Driveなど、Google Workspaceアプリの範囲内で動作します。自社独自の受注管理システム・顧客データベース・在庫管理システムなどは、Google Workspaceとは別のシステムであることが多く、そこにあるデータは別途連携の設計が必要です。Workspaceで使えることと、自社の核となる業務データをAIが扱えることは、別の問題として取り組む必要があります。
小規模な会社でも「AI対応システム」に取り組む意味はありますか?
あります。むしろ、小規模な会社ほど担当者1人の負荷が大きく、AIが業務データに直接アクセスして処理を代替できれば効果が出やすい環境です。受注確認・在庫確認・売上集計など、繰り返し行われる確認作業はAIが最も得意な領域です。まず「1つの業務フロー」から始めるスモールスタートで取り組めます。

出典:Google「Less switching, more flow: 5 new agentic capabilities across Google Workspace apps」(Google Workspace 公式ブログ、2026年9月)/Google「Create content, schedule events, and coordinate tasks across Workspace, regardless of what app you are in」(Workspace Updates 公式ブログ、2026年9月2日)

株式会社DnDは、AI連携を前提としたシステム開発を行うDX/AX(AIによる業務変革)パートナーです。

  • 既存システムへのAPI追加・データ整備:現在お使いのシステムに、外部からデータを読み取れるAPIエンドポイントや定期エクスポートの仕組みを追加します。どの範囲から手をつけるかのご相談から対応します。
  • AI連携前提の新規システム開発:API・Webhook・構造化データ設計を標準で組み込み、将来AIエージェントや自動化ツールを接続するときに追加改修が最小限で済む設計で開発します。
  • 業務フローの整理と設計支援:どの業務データをAIに扱わせたいか、どこから始めるべきかの整理を、要件定義の前段階からご支援します。

「今動いているシステムをどう活かすか」「次のシステムをどう設計するか」、どちらの段階からでもご相談いただけます。

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