人手不足倒産が過去最多を更新した背景
東京商工リサーチの集計では、人手不足を主因とする倒産の内訳として「人材確保難」「人件費高騰」「求人難」の3類型が挙げられています。2026年度上半期(4〜9月)には合計240件に達し、前年同期を17.0%上回りました。
背景には、最低賃金の引き上げが続く中で採用単価も上昇し、中小企業が人材を確保しにくくなっていることがあります。加えて、物価高による仕入れコストの上昇も重なり、「売上は維持できても、人件費が出せない」状況に追い込まれるケースが増えています。
倒産の直接的な引き金が「退職」であるケースも含まれています。特定の業務を担っていた人が辞めたことで業務が滞り、取引先への納期遅延・入金遅延が連鎖した例が、同社の調査では複数報告されています。
注目すべきは、これが大企業ではなく中小・小規模事業者に集中している点です。従業員が少ない組織ほど、1人の退職が業務全体に与える影響は大きくなります。
倒産に至らなくても「業務が止まった」経験はないか
倒産まで至らなくても、次のような経験を持つ会社は少なくありません。
- 受注担当が1週間休んだら、FAXの注文書の処理が溜まって取引先からクレームが来た
- 経理担当が退職し、引き継ぎに3ヶ月かかった(引き継いだ人も何をしているか分からない状態が続いた)
- 問い合わせ対応を1人の社員が「感覚」でこなしており、その人が異動したら回答品質が下がった
これらは「業務の属人化」によって起きます。属人化とは、特定の業務が特定の人物の記憶・経験・手順にのみ依存している状態のことです。その人が離れると、業務の内容・進め方・確認のポイントが引き継げません。
属人化が生まれる3つのパターン
属人化にはパターンがあります。
- ツール依存型:特定の人だけが使いこなせるExcelマクロや手作りのアクセスデータベースで業務が回っている
- 記憶依存型:顧客の特別な条件、取引先の好み、イレギュラー対応の方法が担当者の頭の中にしか存在しない
- 連絡先依存型:特定の担当者のスマートフォン・個人メールに重要な取引連絡が集中しており、他の人には転送されていない
どのパターンも、マニュアルを整備しシステムを活用することで解消できます。ただし「まずマニュアルを書く」という方法は、書く作業自体に時間がかかり、継続されにくい傾向があります。入力・処理・記録をシステムが担う設計にしておけば、マニュアルに頼らなくても誰でも同じ操作ができる状態を作れます。
自社の属人化リスクを確認する6項目
まず、自社の業務のどこに属人化リスクがあるかを棚卸しします。特定の担当者を思い浮かべながら、以下の6項目を確認してください。
| # | 確認すること | 「いいえ」の場合のリスク |
|---|---|---|
| 1 | その業務の手順を書いたマニュアルが存在し、最近更新されているか | 退職時に手順が消える |
| 2 | 使っているツール・システムのログイン情報が会社として管理されているか | 担当者がいないとログインできない |
| 3 | 業務の処理記録(誰が、いつ、何をしたか)がシステム上に残っているか | 進捗が見えず、引き継ぎ後に混乱が起きる |
| 4 | FAX・メール・郵便など、受信した書類が会社の共有フォルダや共有メールに保存されているか | 個人端末・個人メールに書類が残り、引き継げない |
| 5 | 取引先・顧客とのやりとりが会社の記録システム(CRM等)に残されているか | 「あの件はどうなっていたか」が担当者しか知らない |
| 6 | 月次・週次などの定期作業を、担当者以外でも説明できる人がいるか | 1人の欠勤で月末作業が止まる |
1〜3に「いいえ」が多い場合は、退職者が出た際に業務が最も止まりやすい状態です。優先してシステム化の対象にしてください。
属人化を解消する3つのステップ
属人化の解消は、一度に全業務を作り直す必要はありません。「最も止まると困る業務」から始め、段階的に広げていく進め方が現実的です。
ステップ1:業務を「見える化」する
まず現在の業務フローを書き出します。「何が入力として来て、何が出力として出るか」「誰がどのツールを使って、何をしているか」を1枚の図にまとめます。このとき、Excelや独自ツールで処理している部分、手書きのメモに頼っている部分、記憶で対応している部分を特定することが目的です。
見える化した業務フローは、後のシステム化の「設計図」になります。ここを丁寧にやることで、必要以上に大きなシステムを作らずに済み、開発費用を抑えられます。
ステップ2:入力・転記をシステムで統一する
属人化の多くは「入力」と「転記」の工程で起きます。誰かが目視で確認し、手で別のシステムに打ち込む手順が残っている限り、その工程は担当者依存です。
特に効果が高いのは、紙帳票のAI-OCR(光学文字認識)による自動読み取りです。FAXで届く注文書・納品書・請求書などを、AI-OCRが自動でテキストデータに変換し、受注システムや会計ソフトへ直接連携する設計にすることで、入力工程の属人化をなくせます。読み取り精度は確認ルールで補完するため、完全な無人化ではなく「確認だけ人が行う」設計が現実的です。
同様に、顧客からのメール問い合わせや申込フォームも、記録が自動でシステムに入る設計にすることで、「あのメールはどこへ行った?」という担当者依存を解消できます。
ステップ3:処理の記録と通知を自動化する
最後に、「処理が完了したか」「期限が近づいているか」「漏れが出ていないか」をシステムが自動で確認する仕組みを追加します。具体的には、処理済み・未処理をステータス管理する仕組み、期日が来たら担当者または上長に自動通知する仕組みです。
この仕組みがあると、担当者が急に休んでも上長が状況を把握でき、他の人が代わりに処理を進められます。記録が残っているため、担当者が復帰したときや退職後でも、業務の継続性が保たれます。
よくある質問
「担当者が1人しかいない業務」のシステム化は何から始めればよいですか?
属人化の解消にシステム開発は必ず必要ですか?
AI-OCRで紙の帳票を読み取るだけで属人化は解消されますか?
人手不足倒産と業務の属人化はどのように関係しているのですか?
出典:東京商工リサーチ「2026年度上半期(4〜9月)の全国企業倒産」2026年10月
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株式会社DnDは、業務の属人化解消と業務システム化を要件定義から実装・運用まで一貫してサポートするDX/AX(AIによる業務変革)パートナーです。
- 業務フローの整理と見える化:現状の業務を図にまとめ、「最初にシステム化する業務」と「まずマニュアル化だけでよい業務」を切り分けます。ここから始めることで、過剰な開発費用を避けられます。
- AI-OCRと業務システムの連携:FAX注文書・紙の請求書・配送伝票など、毎日届く紙帳票の手入力をなくします。AI-OCRで読み取ったデータを受注システム・会計ソフトへ自動連携する仕組みを構築します。
- 処理記録と通知の自動化:「誰が、いつ、何を処理したか」が記録に残り、期日が近づいたら自動通知が届く設計を標準で組み込みます。担当者が変わっても業務が止まらない状態を目指します。
「何年も同じ人が担当していて、引き継ぎのやり方が分からない」「退職者が出て初めて属人化に気づいた」という段階からご相談いただけます。