なぜSaaSのコストは「気づいたら増えている」のか

SaaSは導入が手軽な反面、コストが静かに膨らみやすい構造を持っています。よくある原因は次の3つです。

  • ゴーストライセンス:退職・異動・部署変更があっても、ライセンスが解約されずに残り続ける。担当者が変わるたびに1席ずつ積み上がる。
  • 使わない機能を含む上位プランへの移行:「いつか使うかも」「営業担当に勧められた」という理由でプランを上げたまま、結局は一部の機能しか使っていない。
  • 目的が重なるツールの並行利用:部署ごとに別のSaaSを導入した結果、類似機能を持つツールが複数走っている。

調査会社Zyloの2026年レポートによれば、企業は平均してSaaS支出の約30%を「使われていない機能やライセンス」に費やしているとされています。中小企業でも、SaaSの本数が増えるにつれて同じ状態が起きやすくなります。

「SaaSの棚卸し」とは何をするのか

見直しの出発点は、まず現状を把握することです。「SaaSの棚卸し」とは、契約中のSaaSをリストアップし、コスト・利用状況・目的の重複を一覧にする作業です。

  • 月額・年額の費用と契約期間
  • 実際に使っているアカウント数(全ライセンス数との差)
  • 主に使っている機能(全機能中の割合)
  • 同じ目的を持つ他のSaaSとの重複

この一覧を作るだけで、「これは整理できる」「これは別のもので代替できる」という優先順位が見えてきます。棚卸しには一覧表計算ツールで十分です。まず30分で洗い出してみることをおすすめします。

使っていない機能を削るのではなく、使っている機能だけを残す。その視点の転換が、コスト最適化の入口です。

自社専用の軽量システムとはどういうものか

「自社専用の軽量システム」とは、汎用SaaSの代わりに、自社の業務フローに合わせた最小限の機能だけで動くシステムのことです。具体的には次のような特徴を持ちます。

  • 使う機能だけを実装:受注管理なら「登録・更新・一覧・CSV出力」だけ。使わないキャンペーン機能や多通貨対応は最初から持たない。
  • 操作が自社業務の流れに沿っている:SaaSに合わせて業務を変えるのではなく、業務の流れに合わせてシステムを作る。
  • ライセンス費が発生しない:月額課金が不要になるため、利用人数が増えてもコストが線形に増えない。

近年はAIを活用した開発(いわゆるバイブコーディング)により、こうした軽量システムを従来より低コスト・短期間で構築できるようになっています。「SaaSほど高くない」選択肢が現実的になっています。

代替を進める判断のチェックリスト

次のうち2つ以上当てはまるSaaSは、代替を具体的に検討する価値があります。

  • 実際に使っている機能が全体の2〜3割以下だと感じる。
  • 利用者数が増えるたびにコストが比例して上がる席課金制になっている。
  • 自社業務に合わない操作フローを毎回手順でカバーしている。
  • ライセンスが余っているのに整理が追いつかない。
  • 同じような目的のSaaSを複数契約している。

代替を始める現実的な進め方

「全部見直す」は一度に難しいため、一番インパクトが大きい1本から始めるのが現実的です。進め方はおおむね次の流れです。

  • ① 一覧化:契約中の全SaaSをリストアップし、費用と利用状況を並べる。
  • ② ターゲット選定:「コストが最も高い」かつ「使い切れていない」SaaSを1本選ぶ。
  • ③ 使っている機能の特定:実際に使っている機能を書き出し、代替システムに必要な範囲を絞る。
  • ④ 構築・移行:必要な機能に絞ったシステムを構築し、並行稼働を経てSaaSを解約する。

1本の代替が完了すると、月額の固定費が削減されると同時に「どこまで絞れるか」という感覚が身につきます。2本目以降の判断が速くなります。

まとめ

SaaSは「入れれば終わり」ではなく、継続して費用が発生し続けます。使い方が変わっても契約が自動更新される仕組み上、放置するほどコストが積み上がります。「削ぐ」という視点でSaaSを棚卸しし、使っている機能だけを持つ自社専用システムに置き換えることは、固定費の削減だけでなく、業務の標準化や操作性の向上にもつながります。

まず一覧化から始めてみることが、最初の一歩です。

よくある質問

SaaSのコストが膨らむ主な原因は何ですか?
使わない機能を含む上位プランへの移行、退職者分のライセンスが残る「ゴーストライセンス」、目的の重なる複数ツールの並行利用が主な原因です。「気づいたら使っていない機能に払い続けていた」という状態が積み重なってコストが肥大化します。
自社専用システムに代替すると何が変わりますか?
月額ライセンスの固定費が削減でき、自社業務に合わせた画面・機能だけが残るため操作が簡単になります。また、過剰な機能がないぶん運用・教育コストも下がる傾向があります。一方で、初期開発費用と保守体制の確保が必要になります。
代替を検討すべきSaaSはどう見分けますか?
「実際に使っている機能が全体の2〜3割以下」「人数が増えるたびにコストが線形に上がる席課金制」「自社業務に合わない操作フローを毎回補っている」——このうち2つ以上当てはまるSaaSは代替の検討価値があります。
代替システムの構築にはどれくらいかかりますか?
対象業務の範囲と機能数によって大きく異なりますが、単一業務を対象とした軽量なシステムであれば数週間〜2〜3か月程度で稼働できる場合があります。まず「一番コストが高くて使い切れていないSaaS」を一つ特定し、そこから始めるのが現実的です。

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