「AIへの説明」で、1日何分消費していますか?
生成AIを使い始めたチームで、じわじわと積み上がるコストがあります。毎回の会話の冒頭に入力する「前置き」です。
たとえば営業担当が提案書の下書きをClaude(またはChatGPT)に頼むとき、「うちの会社は中小企業向けのDXコンサルで、顧客は経営者と実務担当が多く、文体は親しみやすいが専門性も必要で……」という背景を毎回書き直しているとしたら、その5〜10分が毎日の積み重ねになります。さらに困るのは、チームで共有していないと、人によって前置きの精度が違うため、アウトプットの品質もまちまちになるという問題です。「Aさんの作った提案書はいいのに、Bさんのはトーンが違う」という現象の原因の一つが、ここにあります。
Claude Projectsはこの問題を解決するために設計されたワークスペース機能です。「カスタム指示」と「ナレッジベース」を一度設定すれば、その後はプロジェクトを開くだけで専用アシスタントとして使えます。
Claude Projectsで変わること——仕組みの概要
Claude Projectsは、claude.ai上で作れる「専用の作業部屋」です。通常のチャット画面とは異なり、次の2つが事前に設定できます。
① カスタム指示(プロジェクト設定)
「このプロジェクトに入力されたすべての会話に、あらかじめこの役割と前提を適用する」という指示を保存できます。「あなたは中小企業向け業務効率化の専門家として、〇〇のトーンで、結論から書く形式で回答してください」という内容を一度書けば、以降の会話ではいちいち書き直す必要がありません。
② ナレッジベース(プロジェクトドキュメント)
PDFや長文テキストをアップロードして、AIが会話の中で参照できるようにします。製品マニュアル、過去の提案書、社内FAQ、就業規則といった文書を「知識」として持たせることで、「マニュアルの○○ページに書いてある対応例に沿って返答を作って」という指示が省けます。
さらに、プロジェクト内の会話は文脈が引き継がれます。先週の会話で「製品Aの提案書の構成を決めた」という経緯があれば、今週「その続きで価格表現を追加して」と伝えるだけで成立します。
2026年8月時点の仕様:無料プランで最大5件のプロジェクトを作成可能。TeamプランではメンバーとプロジェクトをSharedで共有でき、全員が同じカスタム指示・ナレッジベースを使える状態になります。
部門別の使い方——4つの具体的な設計例
どの部門でもプロジェクトを1つ作れば始められます。下記は中小企業でよく活用される設計例です。
営業担当向けプロジェクト
カスタム指示の例:「あなたは当社の営業サポートです。顧客は中小企業の経営者・実務担当者が中心です。提案書は結論→課題整理→解決策→費用感の順で、専門用語は最小限にしてください。見積りに関する最終決定の権限はありません。」
ナレッジとして登録するもの:サービス・料金表PDF、よくある質問と回答集、過去の提案書(会社名等を匿名化したもの)
主な使い道:提案書の下書き生成、見積り説明文の作成、商談前の想定Q&A整理
人事・総務向けプロジェクト
カスタム指示の例:「あなたは社内向けの人事・総務サポートです。法的判断を要する問いには『詳細は担当者または専門家にご確認ください』を必ず付け加えてください。社員への案内文は丁寧な敬語で書いてください。」
ナレッジとして登録するもの:就業規則(個人情報を含まない部分)、休暇申請・経費精算のフロー説明文、社内FAQリスト
主な使い道:社員からの問い合わせ回答案、社内通知・案内文の下書き、採用要件ドキュメントの整理
顧客対応・サポート向けプロジェクト
カスタム指示の例:「あなたは顧客サポート担当です。返信は簡潔に、共感ファースト(まずお詫びまたはお礼)の構成で。クレームには原因の断定を避け、確認のうえ折り返す旨を伝える形にしてください。」
ナレッジとして登録するもの:製品・サービスのマニュアル、よくあるトラブルと対応方法、禁句・注意ワードリスト
主な使い道:問い合わせメール返信の下書き、クレーム対応文の生成、FAQ記事のアップデート案作成
マーケティング・コンテンツ担当向けプロジェクト
カスタム指示の例:「あなたは当社のコンテンツ担当アシスタントです。ブランドトーンは『頼りになる専門家だが堅すぎない』。コラムは結論先出し、見出しは問いかけ形式、1文は40〜60字目安。SNS投稿はカジュアルに、ハッシュタグは2〜3個。」
ナレッジとして登録するもの:過去のコラム記事(5〜10本程度)、Xポスト・SNS文章のサンプル集、自社サービス・商品の説明資料
主な使い道:コラムの構成案・下書き、SNS投稿文の一括生成、メールマガジンのネタ出し
立ち上げ方——今日から始める3ステップ
ステップ①:カスタム指示を「3つの問い」で書く
カスタム指示が長すぎると重要ポイントが埋もれます。200〜500文字を目安に、次の3点を軸に書くと整理しやすくなります。
- 「誰に向けて」:AIは何役を演じるか、ユーザーはどんな属性か
- 「どんな形式で」:文体・構成・長さの目安・使ってはいけない表現
- 「何に注意して」:判断を避けるべき領域、確認を促すべきトピック
最初は簡易版で構いません。実際に使いながら「ここがずれる」と気づいたタイミングで都度修正するほうが、現場に合った指示が育ちます。
ステップ②:ナレッジに入れるものと入れないものを仕分ける
ナレッジベースに入れる候補が決まったら、以下の基準で仕分けてください。
- 入れてよいもの:製品説明・サービス仕様・社内FAQ・過去の提案書雛形(固有名詞を匿名化)・就業規則の一部(個人情報を含まない箇所)
- 入れないほうがよいもの:顧客個人情報・財務データ(BS/PL等)・パスワード・契約中の取引先名が入った生の資料
Anthropicは有料プランのユーザーデータを学習に使用しないと明示していますが、クラウドサービスである以上、「入れても問題ない情報か」を事前に判断する習慣を持つことが大切です。
ステップ③:チームで「このプロジェクトから始める」を共有する
Teamプランでは、プロジェクトをメンバーと共有(Shared Projects)できます。設定が終わったら、チームへの共有方法と「AIを使うときはこのプロジェクトに入ってから」というルールをSlackや朝礼で一言伝えるだけで定着率が大きく変わります。専用プロジェクトがあることで、「AIをどう使えばいいかわからない」という社員の心理的ハードルも下がります。
プロジェクト管理で気をつけたい3つのこと
Claude Projectsは手軽に使える分、運用上の落とし穴も存在します。
ナレッジは「賞味期限」を意識する
アップロードした文書が古くなっても、AIはその文書を参照し続けます。半年ごとにナレッジの内容を確認して更新する「ナレッジ棚卸し」を担当者のカレンダーに入れておくことをお勧めします。
指示の「意図外の解釈」を定期的にチェックする
カスタム指示が思い通りに機能しているか、週に1〜2度、いくつかのサンプル問いに対するアウトプットを確認する習慣を持つと品質が安定します。「この文体になっていない」「この注意文が抜けている」という気づきを指示に反映するサイクルが、プロジェクトを育てる鍵です。
プロジェクトを増やしすぎない
「部門ごとに作ろう」と増やしすぎると、管理の手間が増え、それぞれの指示・ナレッジが古くなっていきます。最初は1〜2件。「このプロジェクトが実際に週3回以上使われている」という実績が出てから、次の部門へ広げるペースが維持しやすいです。
「使われるAI」と「放置されるAI」の分岐点
AIツールの導入でよく聞かれる「入れたのに結局使われていない」という状況の多くは、使い始めるたびにゼロから設定しなければならない手間に原因があります。毎回の前置きが面倒、人によってアウトプットが違うから信頼できない——こうした小さな摩擦が積み重なって「使わなくなる」流れになります。
Claude Projectsは、AIを「汎用ツール」から「この仕事のための専任担当」へと変える仕組みです。設計に30分かけるだけで、その後の会話の質と速度が変わる。チームで共有すれば、AI活用の「人によって違う問題」も解消されます。すでにClaude(またはChatGPT)を日常的に使っているなら、次のステップとして試してみる価値があります。
よくある質問
Claude ProjectsとChatGPTのカスタムGPTsは何が違いますか?
無料プランでも使えますか?
アップロードした社内文書はAIの学習に使われますか?
プロジェクトはいくつ作れば十分ですか?
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株式会社DnDでは、Claude Projectsをはじめとした社内AIアシスタントの設計・設定支援を承っています。「どの部門から始めればよいかわからない」「チームへの定着がうまくいかない」という段階からのご相談も歓迎です。